柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

抑圧された者たちのため息

丸山眞男「民主主義こそ、困難であるが
その実現を目指し続けなければならない永続革命である」
柄谷行人「丸山のその考えは間違っている。
世界同時革命によって資本主義が揚棄される」

丸山眞男柿本人麻呂
柄谷行人藤原定家か。


テリー・イーグルトン『宗教とは何か』(青土社

 まさにこうした点から、マルクスは宗教のことを、魂なき状況の魂であるだけでなく「抑圧された者たちのため息」と述べたのである*18。

*18 Karl Marx, "Contribution to the Critique of Hegel's Philosophy of Right," in Karl Marx: Early Writings, ed. T. B. Bottomore (London: C. A. Watts, 1963), 44. 〔マルクスヘーゲル法哲学批判序説城塚登訳、マルクスユダヤ人問題に寄せて ヘーゲル法哲学批判序説』(岩波文庫、一九七四)所収、七二頁。「ヘーゲル法哲学批判 序説」三島憲一訳、『マルクス・コレクションI』中山・三島・徳永・村岡訳(筑摩書房、二〇〇五)所収、一五八頁〕


ヘーゲル『イエーナ体系構想』(加藤尚武監訳、法政大学出版局

 ……人格つまり純粋な対自存在は、一般意志からきりはなされた個別意志として尊敬されるのではなく、一般意志としてのみ尊敬されるのである。


『世界史の構造』のレビュー、関係なさそうな部分を削ったら
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マルクス共産党宣言

 ブルジョアジーは生産手段を、したがって生産関係を、したがって全社会関係を、永続的に革命することなしには、生存することができない。

ユルゲン・ハーバーマス『引き裂かれた西洋』
(大貫敦子・木前利秋・鈴木直・三島憲一訳、法政大学出版局

 カントは、「世界市民憲法体制」という普遍的理念を、こうした「国民公民(Staatsburger)による憲法体制」とのアナロジーで、「普遍的な国際国家」の意味で具体化しようとしている。世界市民的(コスモポリタン)な秩序という大胆な構想を組み上げるに際して、カントは同時代の市民革命における憲法制定行為の精神の影響を受けている。アメリカ革命とフランス革命から生まれた共和国は、正当性を保証する立法がなされた最初の、そして当時では唯一の例であった。「なぜなら全員で全員について決定する、つまり、各人の誰もが自分自身のことを決定するからである。――というのも、誰も自分自身にだけは不当なことをすることはありえないからだ(1)」。こうした観点に立つならば、立憲化された国際共同体は、諸共和国からなる共和国という形でしか考えられない。つまり「あらゆる国家からなる共和制(2)」「世界共和国(3)」としてしか考えられないとされるのである。

(1) Kant, Uber den Gemeinspruch..., a. a. O., 150.
(2) Kant, Rechtslebre, Beschluss, a. a. O., 478.
(3) Kant, Zum Ewigen Frieden, a. a. O., 213.


評者◆山口二郎
人類史の大パノラマ――生活の中身を再構築することが、社会理論の根本課題となるであろう
世界史の構造
柄谷行人
岩波書店 No.2982 ・ 2010年09月18日
http://toshoshimbun.jp/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=2982&syosekino=3079