柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

柄谷行人は丸山眞男以上のことを言っているか

丸山眞男 話文集3』(みすず書房

丸山 とにかくサムライという階級が勃興したということはおもしろい。そこで西欧と日本とが似てくる。〔西欧は〕騎士階級なんだから。騎士階級は自己武装封建制ですね、まさに。君と主従関係を結び、君に対して忠義をつくす。その代わりに封土を与えられる。つまり相互契約。
―― サムライはきわめて非アジア的なものでしょ。
丸山 だから、それをライシャワーが、僕は少し行き過ぎだと思うけど、日本は西欧型社会である、と言うのはそこを言うんですね。明治以後だけじゃない、封建制からして西欧にいちばんよく似ているのは日本である、と。
 ただ、西欧の封建契約に比すると、やはり君の「御恩」という言葉を文字どおり使うんですけど、封土は御恩なんです。それと忠誠義務が完全に双務的というよりは、むしろ君に対して一所懸命忠義を尽くすから、まぁお前にはこれをやろうという、日本には上下の関係が強いですね。中世のヨーロッパの封建制というのは完全に双務的ですから、君が臣、つまり騎士に対する義務を怠るとすぐ忠誠義務を解除される。だから君にも責任があるわけで、日本の場合にはどうも……。