柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

交換過程と世界史

ジョヴァンニ・アリギ『長い20世紀』(作品社)

 このことは、生産過程、交換過程の組織に生じた変化と密接に関連している。これについて、ある人々は、「フォード方式」大量生産(垂直的に統合され、官僚的に運営される巨大企業の組織内で機能する、専門分化した機械システムに基礎をおく生産様式)の危機によって、「柔軟な専門化」システム(中小企業が、市場等の交換過程で調整しながら展開する職人的少量生産)の復活が可能となっている、と主張する(Piore and Sable 1984; Sable and Zeitlin 1985; Hirst and Zeitlin 1991)。別の人々は、収益活動に対する法的規制に焦点を当て、経済生活の「フォーマル化」という不断の増加(すなわち、生産過程、交換過程の組織についての法的規制の普及)によって、かえって正反対の「インフォーマル化」への傾向(何らかの種類の「個人」経営、「家族」経営によって法的規制を回避するような収益活動の普及)が呼び起こされている現状を指摘する(Lomnitz 1988; Portes, Castells, and Benton 1989; Feige 1990; Portes 1994)。

ブローデル(Braudel 1984: 92)が述べるように、一五〇〇年以降ヨーロッパが「世界史の狂暴な形成者」に変貌していったのは、単純な移行ではなかった。