宮崎学『「自己啓発病」社会』祥伝社新書
宮崎は一見ジャーナリスティックですが面白いです。近代日本人の上昇志向の分析から勝間和代、茂木健一郎への批判まで。柄谷がただ知人だから書評した訳ではない感じがしました。
また、年間ベストセラーを見渡してみても、
池上 彰『伝える力』(2010年の年間総合7位:トーハン調べ。以下同)
茂木健一郎『脳にいいことだけをやりなさい』(2009年の年間総合9位)
長谷部 誠『心を整える』(2011年の上半期総合8位)
石井貴士『本当に頭がよくなる1分間勉強法』(2009年の年間ビジネス3位)
勝間和代『起きていることはすべて正しい』(2009年の年間ビジネス8位)
……と、自己啓発本が毎年のように上位を占めている。
また、経済評論家の勝間和代は、証券アナリストとしてのキャリアやワーキングマザーとしてウォール・ストリート・ジャーナル「世界の最も注目すべき女性50人」に選ばれたといった経歴をバックに、新しいアクティブ・ウーマンとして売り出してきた。
勝間和代も同じである。
すべてを情報としてとらえ、自分をめぐる情報の流れを活発にすれば、どんどんよいことが起こる、というのが勝間流ポジティブ・シンキングの基本思想である。そして、そのように情報の流れを活発にするためには、周囲と情報のやりとりをするコミュニケーション・スキルを高めなくてはならない、その方法を教えてあげるわ、というのが勝間の売りなのだ。
茂木にしても勝間にしても――茂木「脳をよくする」スキル、勝間は「情報力を発揮する」スキルという違いはあっても――、結局のところ、コントロール可能なところでだけ自分の心の動きを自分でコントロールするやりかたを教えているのだ。
茂木や勝間が流行るのは、多くの日本人が、こういう考え方をもとめていたからだろう。