柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

「結んでひらいて」作曲・ルソー

sasaki_makoto2007-06-24

竹内成明「解説 『言語起源論』『発音について』」
『ルソー全集 第十一巻』(白水社

 それ(スタロバンスキー)に対してデリダは、次の三点をあげて反論する。(A) ルソーは『言語起源論』でも「憐れみの情は、人間の心に生まれつきそなわっているものだが……」と書いていて、それが生得的で自然のものであることを認めている。(B) またルソーはつづけて「その働きをひきだす想像力がなければ、いつまでたっても活動しないままであるだろう」と書いているのであって、理性がなければ、とは書いていない。つまり「主知主義的」であるとはいえない。そして、想像力が憐れみの情を目覚めさせるというのは、『不平等論』にも『エミール』にも見られるルソーの根本思想である。(C) ルソーは「彼らは互いに敵であった」というのではなく、「互いに相手を敵だと思っていた」と述べている。つまり生まれつき性悪であり、敵同士であったのではなく、ただ弱かったから見知らぬものを敵視していたにすぎない。いいかえれば自然人は、性善・性悪という価値的な対立の手前にいるとみなされている。そしてこれもまた、『不平等論』や『エミール』に見られるルソーの基本的な考え方である。