柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

汪暉『近代中国思想の生成』(岩波書店)

汪暉『近代中国思想の生成』(石井剛訳、岩波書店

東アジア地域では、日本と韓国が相次いで自らの地域言語を採用することによって漢文の影響に抵抗し、自民族の書き言葉を創造した。まさに、こうしたことから、柄谷行人は音声中心主義(phonocentrism)――より精確に言えば地域言語ナショナリズム――「西洋的」な問題であるばかりではないと考えた。なぜなら、ネイション・ステイト形成のプロセスにおいて「世界の各地で例外なく同じような問題が生じている」からである。一八世紀の日本における国学運動はその証拠だった(90)。

(90) 柄谷行人民族主義与書写語言〔ナショナリズムエクリチュール]』、『学人』第九輯、一九九六年、九四頁〔「エクリチュールナショナリズム」、『ヒューモアとしての唯物論』、筑摩書房、一九九三年、五三−五四頁]。