ハンナ・アーレント『カール・マルクスと西欧政治思想の伝統』
ハンナ・アーレント『カール・マルクスと西欧政治思想の伝統』
(佐藤和夫編、アーレント研究会訳、大月書店)
ヨーロッパの政治思想の伝統は、明確に日時を確定できる始まりを持っている。それは、プラトンとアリストテレスの教義をもって始まっている。私が思うに、カール・マルクスの理論において、これまた決定的な終焉があった。
このことが明らかになったのは、もともとヒトラーのドイツに対する武器として作られた原子爆弾が日本に投下されたときである。
『アーレント政治思想集成2 理解と政治』(齋藤純一・山田正行・矢野久美子訳、みすず書房)
「永久革命」という言葉を最初につくりだしたトロツキーは、「全体国家」という語を生みだしたとされるムッソリーニが全体主義は何を意味するのかを知らなかったのと同様に、その言葉が現実にもつ意味を理解しませんでした。
だが彼は、「自然の策略」(カント)や「理性の詭計」(ヘーゲル)というかたちで人間の事柄に機械仕掛けの神を持ち込んだ直接の先達の解決を受け入れるのを拒否した。
彼らの存在によって誰もが思い出すのは、国際連盟におけるブリアンのむなしい意思表示の後、ヨーロッパの時代遅れの国民国家体制を打破し、連合したヨーロッパを建設するという約束を手に戦争を始めたのが、ヒトラーだったことである。