江戸屋猫八百氏
絓秀実『反原発の思想史』(筑摩選書)
もはや、能動的なテロリズムが不可能に思える今日、震災等の「自然災害」というテロのみが、人民の基底に今なお存在している「社稷(コミューン)」的なものを露呈させ、一瞬であってもユートピアを可能にしてくれる、というわけである(江戸屋猫八百「『災害ユートピア』について」)。
当時、平田(清明)市民社会論に着目した一人に、文芸批評家としてデビューする以前の柄谷行人がいる(『柄谷行人初期論文集』参照)。近年の柄谷の『トランスクリティーク』(二〇〇一年)や『世界史の構造』(二〇一〇年)には、アナキズムとマルクス主義を「止揚」しようとするモティベーションが読み取られるが、それは早くから懐胎されていたと見なしうる。ただし、現在の柄谷は農本主義には否定的である。
これに対して、吉本隆明が先述した『「反核」異論』を書いて、この反核運動がソ連製のソ連を利するものに過ぎないと批判したのをはじめ、立場は吉本とは異なるが、鮎川信夫、中上健次、柄谷行人らの批判も相次いだ(国際教育フォーラム編『反核・軍縮宣言集』、小谷野敦『現代文学論争』)。
なお、いとうせいこうは、今なお反原発運動にコミットしている。二〇一一年九月一一日の反原発デモでラップを披露し、「廃炉せよ」と叫んで喝采を浴びている。
江戸屋猫八百「『災害ユートピア』について」
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