柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

固有名イソノミア

柄谷行人は、古代ギリシャの文献で普通名詞だったイソノミア(均衡)を
固有名詞として強調している。

柄谷によれば、ポパーの『開かれた社会とその敵』での
平等主義という言葉がイソノミアだと言っているようだが
今は確認出来ない。


ポパー『開かれた社会とその敵』

 ……そうすることでプラトンが、平等主義者や個人主義者のあいだに、懐疑と混乱をひろげ、彼らが、プラトンの権威に影響されて、彼の正義観の方が自分たちのものよりも真実で良いのではないかと自問し始めるようになったのは事実である。「正義」という言葉はわれわれにとって非常に重要な目標を象徴し、またそのためならどんなことでも耐え忍び、その実現のためには力のおよぶ限りあらゆることをしようという人びとが大勢いるのだから、これらの人道主義勢力を味方に編入するか少なくとも平等主義を麻痺させることは、たしかに全体主義の信奉者が追求するに値する目標であった。


小河原誠『ポパー 批判的合理主義』(講談社

 プラトンは、これをおこなうにあたって正義についてのあらゆる見解を吟味したかのような装いをしながら、実際には平等説を故意に無視したというのがポパーの見解である。ポパーの分析の要点は次の点にある。(1)平等主義が本来立てている原則、すなわち生まれつきの特権の排除を逆転させ、むしろそのような特権が守られるべきだとした。(2)個人主義の原則を集団主義の原則によって置きかえた。(3)国家の任務は市民の保護にあるという原則を、国家の安定を維持し強化することが個人の任務であるという原則によって置きかえた。