柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

普遍意志と国際同盟

カント『法論の形而上学的原理』(一七九七)

 第三。諸国家の国内的軋轢に干渉しあうためのものとして、或る根源的社会契約の理念にもとづいた国際同盟が必要だということ。第四、ただし、この結合は(公民的憲政組織のように)主権的権力を含んではならないのであって、ただ提携(連合)だけを含まなくてはならぬということ、すなわち、それはいつでも解消されるところの、したがって時々の更新されなければならぬところの同盟であり――或る根源的な権利を救うための、つまり、諸国家相互の現実的な戦争に陥ることを防止するための権利だということ。(S.344)

 諸民族の国家が広い地域にわたって余りにも拡大されると、それの統合は、従ってまた成員の保護も、ついに不可能になってしまわざるをえないし、かくして、それに所属する一群の社団は再び戦争状態を惹起することになる。だから、永久平和(全国際法の最終目標)は、一個の実現不可能な理想である。

 そういう目標を目指するところの政治的諸原則、すなわち、そういう目標への連続的な接近に役立つような諸国家の諸結合を形成するための政治的諸原則は、決して実現不可能ではなく、そういう接近が人間たちと諸国家との義務にもとづいて、従ってまたそれからの権利にもとづいて設定された課題であるかぎり、実現可能である。(S.350)

 平和を維持するための若干の諸国家のそういう統一は、常設的な諸国家の会議と名づけられるものである。


南原繁『政治理論史』

 カントの普遍意志とルソーの一般意志との間には類似点があるけれども、その意味は全然異なるものがある。すなわち、両者にとって、普遍意志または一般意志が市民の量的結合でなく、国家意志の普遍性がそれによって基礎づけられる共同の目的原理なる点においては同様である。けれども、その目的原理の意味については両者は異なり、ルソーにおいては個人の利益から出発して共同の利益を掲げるのに対して、カントにおいては、かようなすべての人に共通な経験的利益目的でなくまさに理性それ自身の普遍的法則が目的原理であり、各人は自由の立法者としてこれに関与する。


マルクス・エンゲルスドイツ・イデオロギー』 第三篇 聖マックス

 だから、カントは、利害の表現にほかならない当の理論的表現を、それの表現たる利害から切り離し、フランス・ブルジョアの物質的な利害にもとづいていた意志の諸規定を『自由意志』とか、即自対自的な意志とか、人間的意志とかの、純粋な自己規定といったものに仕立てあげてしまい、かくてこの意志を、純粋にイデオロギー的なもろもろの概念規定を道徳に変えてしまった。


カントの言う普遍意志が、諸国家の意志の統合として
国際同盟の構想に連なると思う。

ヘーゲルマルクスエンゲルス廣松渉
普遍意志・国際同盟を語るカントは理想にすぎないと批判する。
しかし、カントが国際同盟を構想したのは
ドイツ統一前のケーニヒスベルクであり、
後に実現した国際連盟国際連合を構成する
現在の各国家よりも小さい、プロイセン小国家の同盟を
想定していたかもしれない。


イマヌエル・カント http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%8C%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%88
国際連盟 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%80%A3%E7%9B%9F
国際連合 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E9%80%A3%E5%90%88


ドイツ・イデオロギーとは、批判すべきカント的理想の事だったのか。


カント『実践理性批判

 汝の意志の格率 Maxime が常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ。


カント『道徳形而上学の基礎づけ』

 汝の人格ならびに他の各人格における人間性を常に同時に目的として扱い、決して単なる手段としてのみ扱わぬように行為せよ。


利益ではなく人間性を目的にせよ。


マルクス資本論』第三巻(岡崎次郎訳、大月書店)
第三九章 差額地代の第一形態(差額地代 I)
第四〇章 差額地代の第二形態(差額地代 II)
第四一章 差額地代II――第一の場合 生産価格が不変な場合
第四二章 差額地代II――第二の場合 生産価格が低下する場合
第一節 追加投資の生産性が不変な場合
第二節 追加資本の生産性の率が低下する場合
第三節 追加資本の生産性の率が上昇する場合
第四三章 差額地代II――第三の場合 生産価格が上昇する場合 結論
第四四章 最劣等耕作地でも生まれる差額地代
第四五章 絶対地代
第四六章 建築地地代 鉱山地代 土地価格
第四七章 資本主義的地代の生成
第一節 緒論
第二節 労働地代
第三節 生産物地代
第四節 貨幣地代
第五節 分益農制と農民的分割地所有
第七篇 諸収入とそれらの源泉
第四八章 三位一体的定式
   五〇 「賃金、利潤、地代は、すべての収入の三つの本源的な源泉であり、またすべての交換価値のそれでもある。」(アダム・スミス