柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

幾何学の起源

F・M・コーンフォード『ソクラテス以前以後』(岩波文庫

タレスは東方を旅行して、エジプト人のあいだには土地測量のためにいくつか大雑把な規則的手順があるのを知った。毎年、ナイル川の氾濫が土地の境界線を消し去ってしまい、農夫たちの畑地は新しく仕切り直されなければならなかったが、エジプト人は長方形の面積を計算する方法を知っていて、それを使って実際的な問題を解決していたのである。かの好奇心旺盛なギリシア人は畑の仕切りには興味をひかれなかったが、かれらの方法をその特定の問題から切り離して、どんな形の面積でも計算できる方法へ一般化できることに気付いた。そのようにして土地測量のための規則的手順は幾何学に変貌した。


中沢新一『はじまりのレーニン』(岩波現代文庫

不思議なことに、そういう視点で読んでみると、『ヨハネ福音書』の冒頭には、具体的な人間のことばが神そのもの、存在そのものだという、内在的超越の思想が、くもりなく語られているように見えてくるのである。


水野和夫・萱野稔人『超マクロ展望 世界経済の真実』(集英社新書

萱野 要するに、イラク戦争というのは、イラクにある石油利権を植民地主義的に囲い込むための戦争だったのではなく、ドルを基軸としてまわっている国際石油市場のルールを守るための戦争だったんですね。


高澤秀次(たかざわ しゅうじ)
1952年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。文芸評論家。現在、二松學舎大学文学部非常勤講師。著書に『評伝 中上健次』(集英社)、『江藤淳――神話からの覚醒』(筑摩書房)、『戦後日本の論点――山本七平の見た日本』(ちくま新書)、『吉本隆明1945-2007』(インスクリプト)、『ヒットメーカーの寿命――阿久悠に見る可能性と限界』(東洋経済新報社)、編者に『中上健次と読む「いのちとかたち」』(河出書房新社)、中上健次『現代小説の方法』(作品社)など。