柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

サン=シモン、コントの世界国家

レヴィ=ストロース『野生の思考』

 われわれは人文科学の最終目標は人間なるものの構築ではなく、それを解体することであると信じるのだから。


カントは世界共和国は実現困難であるが国家連合を目指すべきであると考えた。
その後、サン=シモンとコントは世界国家について考察したが
前者はキリスト教カトリックでヨーロッパ諸国を統一、
後者はベルギーをモデルとするものだったようだ。


ツヴェタン・トドロフ『われわれと他者 フランス思想における他者像』
(小野潮・江口修訳、法政大学出版局

 それはコンドルセにはみられなかったもので、これについては後にふたたび取り上げるが、サン=シモンは科学を宗教に変えてしまったのだ。最後に世界国家の夢はついにより明確な形を取り始める。

 しかしどうみてもこの世界国家はヨーロッパに似たものとなるだろう。

 だが一方では、この世界国家(エタ・ユニヴェルセル)も内部的な細分化を知らないわけではない。コントは理想的な内部単位はトスカナのような地方かあるいはベルギーのような国家になると考えている。したがって彼はイタリア統一には反対する。地方と世界国家との間には何も介在するべきではないと言うのである。

 ルナンは世界国家(エタ・ユニヴェルセル)まで考えに入れている(「人類を統一に導くこと」)が、そこでは階級に人種がとって代わる。

 だがそれ以上に踏み出して、コンドルセやクローツのように世界国家(エタ・ユニヴェルセル)を夢みるようなことがあってはならない。

 その結論とは、世界国家(エタ・ユニヴェルセル)を形成する必要があるというものである。

 この最初の同一性が獲られるや否や、そのことが単一の世界国家(エタ・ユニヴェルセル)を打ち立てるという目的で、あらゆる場所で同じ法を押し付けるということを含意してしまう。

 世界国家の旗に国民別のリボンを付けることでみな満足するだろう、とコントは示唆していた。


ル・ボン『民族進化の心理法則』

 ダホメ〔トーゴとナイジェリアに挟まれた西アフリカの国〕の王の政府は彼が統治を要請されている民族にとってはおそらくすばらしい政府であるだろう。


江口修(えぐち おさむ)
1950年に生まれる.東北大学文学部博士課程修了.16世紀フランス文学専攻.現在,小樽商科大学言語センター教授.訳書にC.ベーネ/G.ドゥルーズ『重合』,ヤグェーロ『言語の夢想者』(共訳),バヴェル『ペルシャの鏡』がある.
小樽商科大学商学部講師(1978) 同助教授(1981) 同言語センター教授(1993〜現在にいたる)
http://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200901077201770190


週刊金曜日 4/15 843号 電力会社に群がる 原発文化人の罪