柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

プラトン『法律』

プラトン『法律 上』(森進一・池田美恵・加来彰俊訳、岩波文庫

そのようなことをすれば、神である分配の籤も、立法者も、諸君の味方にはならないであろう。

そして各階級から一八〇人ずつを選んだあとで、さらに籤によってその半数を選び、資格審査をした上で、彼らがその年の審議会議員にならねばならない。

 しかしながら、国家全体としては、もし国内のどこかの部分に内紛が生じるのを避けようとするならば、これらの言葉を、ときには少し緩めた意味に使うことも止むをえない――「緩めた意味に」というのは、御承知のように、公正さや情状酌量は、もしそれが行なわれるなら、正しい意味での正義から外れ、完全な厳密さを損うものであるから――そういうわけで、大衆の不満を避けるために、籤による平等も用いざるをえないが、その場合にも、籤をもっとも正しい方向に導きたもうよう、神と幸運とに祈らなければならない。

ところで、これらすべての役職の任命にあたっては、あるものは選挙に、あるものは籤によるべきであり、それはそれぞれの地方および都市において、お互いに友情を確保するために、民主的方法と非民主的方法を併用し、その結果、人びとができるかぎり心を一つにするためである。

つまり籤によって神託偶然に委ねるのである。しかし籤に当った人については、そのつど、第一に、健康で嫡出の子であるか、つぎに、できるかぎり汚れのない家の出であるか、そしてその人自身が、殺人やすべて神事にかかわるその種の犯罪に汚されていないか、また父母も同じように汚されないで暮らしてきたか、という点を審査しなければならない。

すなわち、われわれの国土全域は、できるだけ等しい一二の部分に分けられているから、一つの部族が一つの部分に籤によって割り当てられ、五人のいわゆる地方保安官、もしくは監視隊長を提供し、そしてこの五人組のそれぞれに、自分の部族から二五歳以上三〇歳未満の一二人の若者を選ばせる。そしてこのそれぞれの人びとに、国土の諸部分が籤によって割り当てられ、一月交替で各組が各部分を受け持ち、全員が全国土についての、経験と知識とを持つようにする。

監視隊長は、最初に籤によって割り当てられた、受持部分である国土の地域の如何を問わず、それを出発点として、一月ごとに右まわりで、隣りの地域へとつねに移動しながら、隊員を導いてゆく。

そこで誰でも、最高の財産階級のなかから、自分の望む人を都市保安官の候補者に指名し、挙手により選出され、最大多数を得た者を六人にしぼり、選挙管理人が籤によってそのうちから三人を選び、資格審査をした上で、彼らのために定められた法律に則って、その役を勤めさせるべきである。

すなわちあらかじめ挙手によって選出された一〇名のうちから、籤によって五名にしぼり、資格審査の上で、彼らをその役に選ばれたものとして告示する。

そして選挙人は、専門家の中から候補者を選ばなければならないし、資格審査にあたっては、承認する側も拒否する側も、籤にあたった人が、この道の専門家であるか否かという一点のみを、問題とすべきである。ところで、あらかじめ挙手選出によって選ばれた一〇人のなかから、籤にあたった一人が、資格審査をうけた上で、一年間、法律に従って歌舞団の管理にあたる。また、これとまったく同じ仕かたで籤にあたった者が、向こう一年間、独奏や合奏の競演にやってくる人びとの管理にあたるが、この籤にあたった者も、審査員たちによる資格審査を受ける。

籤によって選ばれる者は三人だが、あらかじめ挙手選出によって二〇人が選ばれ、その二〇人のうちから三人が籤で選ばれ、これを審査員たちが投票によって審査する。
 しかしどんな役職にせよ、誰かが籤にあたった上で、資格審査によって失格とされれば、同じ仕かたで別の人びとを代りに選び、それらの人びとについて、同様の資格審査を行なわなければならない。

そこでこのゆえにまた、部族民による法廷が設けられ、そのつど、必要に応じて、籤によって選ばれた裁判官が、歎願に動かされることなしに、裁判を行なわなければならない。