柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

大澤真幸『〈世界史〉の哲学 古代篇』(講談社)

マルクス資本論』(世界の名著43、鈴木鴻一郎ほか訳、中央公論社

貨幣蓄蔵者は、黄金物神のために自分の欲望を犠牲にする。彼は欲望の福音に忠実なのだ。他方で、彼が流通から貨幣として引き上げることのできるものは、彼が商品として流通に投じたものでしかない。彼は、生産すればするほど、多く売ることができるわけだ。だから、勤勉、節約、そして貪欲が、彼の主徳をなし、多く売って少なく買うことが、彼の経済学のすべてをなす。


大澤真幸『〈世界史〉の哲学 古代篇』(講談社

 ユダヤ教の起源は、前一三世紀の「出エジプト」に定めるのが一般的である。エジプト(第一九王朝)のもとで奴隷状態に喘いでいた者たちが、強力な指導者モーセに率いられ、大挙して脱出した。

これを、神すなわちヤハウェのお陰だと考えるのは、きわめて自然な心情の傾きであろう。
 エジプトを脱出した者どもは、一世代ほど、砂漠をさまよった後、カナンCanaanへと侵入し、そこに定着した。

 カナンに定着したイスラエル民族は、政治的には「部族連合」と見なすべき体制を取った。

 呪術は、人間と神との間の互酬的な贈与―返礼の関係であると考えることができる。

 いくつかの点で、ソクラテスの刑死は、イエスの刑死と類似している。アテナイソクラテスが告訴され、死刑になったのは、紀元前三九九年である。

実際、中世のキリスト教神学の中には、アリストテレスの哲学とともに、新プラトン主義的な着想が深く浸透していた。

たとえば、デュシャンの「泉」は、ただの便器である。