柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

エティエンヌ・バリバール『スピノザと政治』(水嶋一憲訳、水声社)

エティエンヌ・バリバール『スピノザと政治』(水嶋一憲訳、水声社

スピノザは、群集=多数者(マルチチュード)の平等主義と、国家――すなわち、公共の安全と内的信念からなる宗教および、自然的諸原因の連鎖の理性的認識を保証することのできる国家――の設立とを接合しうるような、生の様式と社会的意識のモデルを構築しようと、暗に企図していたのだった。だが、そうやって彼が作り上げたものは、荒唐無稽な空想の産物にすぎなかったのだろうか。ブルジョア的共和主義に内在する脆弱さと矛盾(ヘレント階級に顕著であるような)を乗り越えてしまえるような諸原理を、彼は明確に表明したのだろうか。