柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

オルトヴィン・ヘンスラー『アジール』(国書刊行会)

舟木徹男「解題――アジールの近代――」
オルトヴィン・ヘンスラー『アジール――その歴史と諸形態』(舟木徹男訳、国書刊行会

 彼(ジャン・ジャック=ルソー)がアルプスの自然にはじめて美を見出した人物であることは有名だが(144)、「森に二十歩入れば権力から自由である」という言葉を残した彼はまた、アジールとしての「森」をこよなく愛した人でもあり、ブーローニュの森を散策して思索にふけった。

144.それまでは交通の巨大な障害物であるか、さもなければ土俗的コスモロジーに彩られた場であったアルプスの自然に「風景」の美を見出した近代の認識論的布置は、大人と区別された「子供」を見出したそれと同質のものであったことを柄谷行人は指摘している[柄谷2008:173]。

柄谷行人『定本 日本近代文学の起源岩波現代文庫、2008(単行本は2004年)


ヘンスラー『アジール(避難所)』はドイツでの研究だというが、ナチス政権下でのユダヤ人虐待を考えると読むのが多少嫌になって来た。影響された網野義彦は確かに天皇制に批判的だったが、どちらかといえば流行思想の輸入と思われたのではないだろうか。
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柄谷行人「昔は無縁が良いって言ってたんですよ。皆、縁が嫌で都会に出て来た」
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柄谷行人氏はアジールや網野義彦にそれほど興味あるとは思えないが、長池講義(2007年〜)で会場の八王子という場所に関して高澤秀次いとうせいこう氏がそれらに言及し始めたと思う。ヘンスラー『アジール』(国書刊行会)の訳書が出たのは2010年だという。
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