柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

ヴィリリオは、すべて面白い! あと、キトラーもいけます。

『サミュエル・ベケット!』(水声社) の
木内久美子「演劇の〈今(maintenant)〉を転倒させること」で
faint(かすかな)とfantome(亡霊の)が関連あるらしい事が分かり
岡室美奈子霊媒ベケット」で
デリダユリシーズ グラモフォン』
キットラー『グラモフォン、フィルム、タイプライター』
というジョイス論(後者は読んでいないし前者も憶えていない)と
高城剛さんからのメールを思い出した。
僕「(高城さんが言うとおり)マクルーハンヴィリリオは面白いですね!」
高城「ヴィリリオは、すべて面白い! あと、キトラーもいけます。 」
http://blog.livedoor.jp/makorin2001/archives/51923829.html


G.W.F.ヘーゲル "Der Geist des Christentums und sein Schicksal"
キリスト教の精神とその運命』(伴博訳、平凡社ライブラリー

 こうして彼らは、「乳と蜜の流れる国」を求めてそこに住みつくことができると、彼らの祖先たちなら遊牧民としてそのまま通過しようとしたであろうこの土地を、いまや――定住農耕民族として――自分たちの財産(もの)として所有しようとしたのであった。彼らの祖先たちの場合には、遊牧民というその生き方からして、土地に集結していくつかの町をつくりかけていた他の諸民族に対し一切無干渉のままで通すことができたし、一方それらの民族もまた、彼ら遊牧民が未開地で家畜をするのを黙認し、また彼らがやがてこれらの民族の周辺で全く遊牧をしなくなったときにも、彼らの残した墳墓を尊重したのであるが(31)、その彼らの子孫たちは、もはやこうした遊牧民として戻って来たのではなかったのである。遊牧民であったその祖先たちがあれほど長いこと闘い続けてきたかの〔定住化の〕運命、それへの抵抗を通じて祖先たちが彼らの霊(デーモン)や彼らの民族の霊(デーモン)をいよいよ厳しいものにさせてきたかの運命に、その子孫たちは屈服してしまったのだ。

 すなわち、カナン人の土地のうちから己が定住の地を奪いとることで十分だったのである。〔もはや〕遊牧民と農耕民という生活様式の違いは消失してしまっていた。

*31――新バビロニアによる南王国の征服(前五八六年頃)、ユダヤ国家の滅亡を意味しているかと思われる。