柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

男と女、五分と五分

熊野速玉大社社務所資料

 遠く神代の昔、大和を目指す神武天皇一行が熊野山中で道に迷い、困っておりました。そこに現われた三本足の鳥「ヤタガラス」、熊野権現の使者として天皇に道案内を申し出て、無事一行を大和へ導きました。


中上健次『軽蔑』(集英社

男と女がむき出しの歌舞伎町なら、踊り子は自分を所有物のようにする男だったなら、すぐ別の男に鞍替えするが、このカズさんの故郷で、真知子が女としてなお五分と五分の仲を保とうとするなら、本末転倒も甚だしいが、女が男の所有物ではないと証してくれる愛人がいる。

 男と女、五分と五分、そう心に念じて、愛し抜いた男が、赤く充血しはじめ、痛みにひりつく乳首を持つ女を一人放っておいて、死んだって?(中略)
 真知子は、やり場のない腹立ちのようなものにとらえられながら、ブラウスの生地にひりつく乳首が当たる感触を、五分と五分でなくなった女が、男に抱く軽蔑の感触だ、と思う。


朝日新聞社