柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

抑圧されたものの回帰

スラヴォイ・ジジェク大義を忘れるな』(青土社

 精神分析はまず、ポスト・イデオロギーシニシズムのもつまやかしの正直さの背後にフェティシズムがあることを発見する、そして、「ポスト・イデオロギー的」といわれる現代において強い影響力をもつ、イデオロギーフェティシズム的な様態と、イデオロギーの伝統的な症候的様態――ここでは、われわれの現実の捉え方を構成するイデオロギー的偽りは、「抑圧されたものの回帰」としての症候、イデオロギーの紡ぎだす嘘における欠陥によって脅かされている――とを対置する。


柄谷行人『世界史の構造』(岩波書店

 ルソーは個々人の意志を越えた「一般意志」をもってきて、これによってすべてを基礎づける。しかし、一般意志は個々人の意志を国家に従属させるものでしかない。ルソーのいう社会契約では、個々人は事実上存在していないのである。


柄谷行人の一文一文がこんなに短かったか。
英語版と日本語版を同時に書き、ニュアンスを一致させる為かと思う。
柄谷氏は最近、デリダドゥルーズと違って
明確に書く、多義的な事は書かないと言っている。
出エジプト説や人類学の記述が少ないのが意外だった。
結論の「国連による世界同時革命を働きかけよ」も
四谷の講演ほど明確に主張されていない。


踊る大捜査線2」を見た。
30%ぐらいアメリカ映画のようだ。
深津絵里が撃たれる場面、運転席の犯人3名がアップで右に移動していく場面は
大友克洋(「気分はもう戦争」)のまさに実写化だった。
マトリックス」よりも忠実な。
但し、犯人がリストラ社員という設定は製作された2003年的だ。
派遣切り、秋葉原マツダの事件以前である。


ジジェクの文章は刺激的だがジャーナリスティックな面があり
踊る大捜査線」のように古びてしまう部分がある。
それに対し、柄谷行人の『世界史の構造』は連載や講演の時と違って
淡々と記述が重ねられている。
強調点が分りづらいが外国語で読まれる事、
再読される事を意識しているからだろう。