柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

カール・シュミット『政治的ロマン主義』(みすず書房)

カール・シュミット『政治的ロマン主義』(大久保和郎訳、みすず書房

カントが好んでその変革的意義を主張したコペルニクスの惑星系とともに地球は宇宙の中心であることをやめた。デカルト哲学とともに古い存在論的思考の動揺ははじまった。「私は思う、故に存在する(コーギト・エルゴー・スーム)」という論法は、外界の現実ではなく主観的内面的過程へ、自分の思考へ人間をむかわせた。人間の自然科学的思考は地球中心的であることをやめて中心を地球の外に求め、哲学的思考は自己中心的となって中心を自己のうちに求めた。近代哲学は思考と存在、概念と現実、精神と自然、主観と客観の分裂に支配され、カントの先験的な解決もこの分裂を除きはしなかった。それは思考する精神に外的世界と同じ実在性を返しはしなかった。