柄谷行人を解体する

批評家・柄谷行人を―カント、マルクスを視軸にして―読む

ハンナ・アーレント『暴力について』(山田正行訳、みすず書房)

ハンナ・アーレント『暴力について 共和国の危機』(山田正行訳、みすず書房

アテネ都市国家がみずからの国制をイソノミア(ισονομια)と呼び、ローマ人がみずからの統治形態をキーウィタース(civitas)と呼んだときに、かれらの念頭にあったのは、その本質が命令‐服従の関係に依拠せず、また権力(パワー)と支配(ルール)、あるいは法(ロー)と命令(コマンド)とを同一視しない権力と法の観念であった。


川崎修『ハンナ・アレントの政治理論 アレント論集I』(岩波書店

 アレントが反駁しようとするのは、この支配としての政治、支配の道具としての権力という観念の上に成り立っている暴力と権力の同一視なのである。その際、彼女は、「その本質が命令服従の関係に依拠せず、権力と支配を、あるいは法と命令を同一視しない権力と法の観念」を、アテナイの「イソノミア」の国制とローマの共和政とに求めている(CR139-140:一二九―一三〇)。